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翌朝

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翌朝。私と甲斐は二人でキッチンに並び、一緒に朝食を作った。「七瀬、魚そろそろ焼けてるんじゃない?」「え?あ!忘れてた!」慌ててグリルを開けると、二匹の秋刀魚がこんがりと美味しそうに焼けていた。「ちょうどいい感じに焼けたね。他のことやってたらすぐ忘れちゃう」「危なく焦げた魚食わされるところだった……今度は俺が魚担当するわ。七瀬に任せたら危なっかしい」「失礼ね。たまたま忘れてただけでしょ」遥希と同棲していたときは、家事は完全に私一人で担当していたけれど、甲斐は一人暮らし歴が長いから家事は大体何でもこなせる。だからこうして私の家に泊まりに来たときは、朝から一緒に料理を楽しむことが出来るのだ。「七瀬、これ味見してみて」「うん。……美味しい!これ本当にうちの味噌使ってるの?」債券基金香港。わざわざ家から味噌持参してないし」甲斐が作る料理は、どれも本当に美味しくて私好みの味に仕上がっている。まるで甲斐の優しさが滲み出ているような、家庭的な味がする。「朝から美味しい秋刀魚が食べれるとか幸せ過ぎる……しかも大根おろしまで付いてるし」「秋刀魚に大根おろしは欠かせないだろ。あとポン酢な」「甲斐が神様に見えるよ……」「大袈裟だって」テーブルには、秋刀魚の他に甲斐が作ったわかめと豆腐のお味噌汁、イカの塩辛ときんぴらごぼうが小鉢で並んでいる。「美味しい……身体中に染み渡る」「これでそんなに感激するとか、お前いつもどんな朝食食べてんだよ」「普段は適当だよ。納豆と卵混ぜてご飯にかけて食べるとか」一人暮らしの身で、朝からちゃんとした食事を用意して食べる人はこの世の中にどれくらいいるのだろう。「朝食は一日で一番大事な食事なんだから、ちゃんとしたもの食べた方がいいよ」「お昼にコンビニ弁当ばっかり食べてる甲斐に言われてもなぁ……」「生意気言うな」親友だった頃と、話す内容はそこまで変わっていない。でも、二人でいるときの空気は確実に変わったと思う。ふとした瞬間に、甘さを感じるのだ。「まぁ、これから一緒にいるときは俺が作るからいいけど」そう言って甲斐は、私の口の端に付いていたご飯粒を指で取り、微笑んだ。時折見せる甲斐の甘い笑顔が、胸を貫く。この笑顔が、今だけだなんて思いたくない。甲斐の気持ちを疑っているわけではないのに、いつか離れていってしまうのではと思うと怖くなる。あと一年、二年、三年後……私たちは、どうなっているのだろう。今と同じように、隣で寄り添っていられるのだろうか。「七瀬、どうした?」「え?」「箸、止まってる」「あ……ごめん、考え事してた。朝ご飯早く食べて家出る準備しないとね!」私は甲斐よりも先に朝食を食べ終え、シャワーに入り軽く化粧を施した。私が一人暮らしをしているマンションから実家までは、車で約三十分ほどの距離だ。甲斐の運転で実家へ向かう途中、何か手土産を買いたいと甲斐が言ったため、近所で人気の和菓子店で大福をいくつか購入した。そして昼前に実家に到着すると、玄関にはなぜか翼と祖父が並んで立っていた。「ただいま……どうしたの?二人揃って出迎えてくれるなんて……」「姉ちゃん、甲斐くんと付き合うことになったの!?」「え……」今日は甲斐を連れて行くとしか翼には伝えていなかったのに、既に見抜かれてしまっているようだ。翼の目はキラキラしていて、祖父もどこか浮かれた様子だ。

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on Dec 08, 20