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身分としての武士などいらない

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身分としての武士などいらない。欲しいのは志としての武士道だから。いつまでもこの日本の刀を愛でていたいのだ。例えそれが血に染まっても…美しい。そう、刀は見るだけなら美しいままでいられる。人の命を奪うものなのに。彼女はそんな刀のよう…一方その頃。「あ、いたいた。えっと確か…斎藤さーん」新撰組と名を変えた壬生浪士組の屯所の中を、紫音は歩き回っていた。その中で、芹沢の金策(恐喝という)により建てられた道場へ向かう男を見つけ、呼び掛ける。證券行れ、振り向いた男は訝しげに紫音を見た。紫音はにこっと笑い、男に駆け寄る。「初めまして、ですよね。私、紫音っていいます」「…どうも」「お名前、教えて下さい」「先程名を呼んだではないか」「呼びましたけど、自己紹介したんだから斎藤さんも教えて下さいよ」「…斎藤一だ」「よろしくお願いします」頭を下げる紫音。斎藤は表情を変えずに軽く頷いた。頭を上げて斎藤を見れば、無表情で紫音を見ている。ほつれ毛一本としてないきれいに結い上げられた髷。キリリとした眉毛。しっかりと閉じられた口。一見して「真面目」な印象の男だ。「今から道場ですか?」胴着姿を見て、紫音が斎藤を覗き込むように見れば、こくりと無言で頷いた。「では、話したいことがありますので、お相手いただけますか?」そう言いながら、紫音は否定を許さない勢いで前を歩き出す。お相手とは…話でなく剣なのか?斎藤は無言のまま首を傾げたが、気を取り直して紫音の後を追った。「あ、紫音さん」「沖田さん、こんにちは」「こんにちは。どうしたんですか?あれ、斎藤さんまで」後ろから現れた斎藤を見つけ、ますます沖田は首を傾げる。その様子を見て、紫音がくすくすと笑った。「斎藤さんに一本お相手していただくんです」「えぇ~僕じゃ駄目なんですか?」「沖田さんとはまた今度」拗ねるように口を尖らせた沖田を見て、斎藤も口を挟む。「総司…それに今から巡察だろう」言われて沖田は思い出したように肩を落とした。「あ、そうだった。残念だなぁ…じゃぁ紫音さん、また今度、約束ですよ」「はいはい」バタバタと出ていく沖田を笑顔で見送ると、紫音は竹刀を準備する斎藤に向き直る。「あ、ありがとうございます。竹刀ですか…使った事ないんですよね~」「………駄目か?」少し残念そうに言う斎藤に、紫音は慌てて了承した。受け取った竹刀を斎藤のを見ながら持つと、何度か素振りしてみる。刀とは勝手が違うが、何とかなりそうだ。「では、始めよう」そう言うと、斎藤は竹刀を中段に構えた。紫音も抜刀ではなく、同じように構える。「お願いします!」紫音は勢い良く駆け出し、斎藤に向けて竹刀を振るう。パンッパァァンッ竹刀独特の衝突音が二人きりの道場に響く。紫音が一方的に攻めるのに対し、斎藤は紫音の腕を見極めているのか、全て受け止めていた。パァァンッパンッパンッダダダダパンッ竹刀て竹刀が交差し、紫音の苦手な鍔ぜり合いになった。汗が一筋流れる。紫音は持てる限りの力で斎藤の竹刀を押さえ込みながら、笑った。

cruz20

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on Dec 24, 20