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ハンベエはベルガンの身内に対し、多少心を痛めた様子であったが、気を取り直したように言った。「ボーンさんの話はおしまい?」ロキがボーンに尋ねた。「一応、終わりだが・・・何か?」「実はね、ハンベエが風呂に入りたいって言うから、それなら、ゲッソリナ名物のラシャレー大浴場に行こうって話になってたんだ。」ラシャレー大浴場・・・これこそ、ゴロデリア王国宰相ラシャレーが、多大な政治的情熱を傾けて作り上げた一大施設であった。収容人員1000人。ラシャレーの方針により、最低身分の者も低料金で入れるようになっている。この時代、風呂はさほ公司註冊ていない。というより、入浴という習慣さえ、一部の好事家の間に流行り始めているだけで、大概は行水で事を済ましている。人々は困った事に存外不潔であった。ハンベエは入浴の習慣があった。理由は、師のフデンが風呂好きであったからである。フデンは自家用の風呂を手作りで作り、その風呂を沸かして準備するのがハンベエの毎日の仕事だったのだ。で、師の入った後は、その風呂はハンベエが使う事になっていた。フデンは、どこでその習慣を身につけたものか、大の風呂好きであったのである。結果として、ハンベエも風呂好きであった。山を降りて、風呂の事はすっかり忘れていたが、今日、フナジマ広場の近くの小川で体を洗っていた時に、風呂の事を突然、思い出したのである。ボーンにも異存はなく、3人でラシャレー大浴場に行く事になった。意外や、ラシャレーという嫌われ者の政治家はこんな物を作っていたのだ。何故?・・・理由は古代ローマ人にでも聞いてくれ。「で、ハンベエ達は大浴場へ行ったのか?」「そういう事ですな。」例によって、ラシャレーは早朝の執務室で『声』の報告を受けていた「あの大浴場に入るには武装解除されるはずだぞ。」「そうですな。別に気にもせず、武具一式、係の者に預けたようですな。」「ふむ、意外に解らん男だの、そのハンベエという男。」「そうですな。無用心というか。しかし、ベルガン一派があっさりやられてしまうとは、驚きですな。」「・・・そちは、期待していた風ではなかったか?」「はあ、しかし37人ですからな。予想外ですな。」「ふむ、化け物じみた奴じゃわい。」「話ははずれますが、大浴場に入ったハンベエは、あれを作ったのがラシャレー閣下と知って、エラク宰相の事を誉めてたそうですな。」「ほう・・・そのハンベエという化け物に下手に手出しして、これ以上被害者を出すのも考えものという事になってきたな。」誉められて悪い気のする人間はいない。昨日まではハンベエが片付けられるのを待っていた風情のラシャレーの言葉付きが変わっていた。「そうですな。しかし、王女に届けられた手紙の一件は進展しませんでしたな。ここのところ、キナ臭い風評が飛びかっているので、気になるところですな。」「それを探るのが、そちの仕事ではないか。」「まことに職務怠慢な話で申し訳のない事ですな。」「バンケルクとエレナ王女は師弟関係だからな。ただの手紙とも思えんが・・・。」「後、妙な話が一つ有りますな。イザベラという女占い師がハンベエを『ボンボン酒場』に相い引きに誘ったらしいですな。」「『ボンボン酒場』?」「繁華街にある、宿泊用の部屋も兼備された酒場ですよ。個人で売春婦をしている輩が客を見繕うのに良く使っている、いかがわしい店ですよ。まあ、我々も情報収集活動も含めて活用していますな。」「ふん、いかがわしい店か・・・それに売春婦・・・」ラシャレーは不快気に顔を歪めた。「繁栄とは、ある程度いかがわしい物も含めて成立するものですな。ゲッソリナが大都市になったので、そういうナリワイも成り立っているのですな。それに売春婦は人類最古の商売とも言われますからな。」